1. 顧客の背景
ブラジルの老舗調理器具・工具メーカーであるT社(以下「T社」)は、1911年に設立され、本社をブラジルのリオグランデ・ド・スル州に置いています。100年余りにわたるものづくりの伝統とたゆまぬ革新を背景に、T社は調理器具、刃物、家電、工具の分野で国際的に知られるメーカーへと成長し、製品は世界120カ国以上に輸出されています。
事業の拡大と生産規模の増大が続く中、T社は半製品の在庫管理の複雑化、倉庫スペースの逼迫、入出庫効率のボトルネックといった複数の課題に直面していました。今後の成長を支え、生産全体のタクトを高めるため、同社は社内物流体制の体系的なアップグレードを決定しました。現在、このプロジェクトはATOMIXが推進・実施しています。

2. プロジェクトの課題
プロジェクト開始前、T社の半製品保管は主に従来型の平屋倉庫と一部の半自動化設備に依存しており、次のような課題が顕在化していました。
- スペース利用率の低さ:平屋倉庫では増え続ける半製品の保管ニーズに対応しきれず、工場の土地資源にも限りがあります。
- パレット規格の多様化:生産ラインごとに使用するパレットのサイズが異なり、従来の自動化設備では互換性が十分に確保できませんでした。
- 設備連携の複雑さ:工場内にはすでにAMRなど他社製の設備があり、新旧システムの融合は難易度が高いものでした。
- 投資・改修コストへの厳しい目:既存の仕組みをすべて覆すことなく、技術的な飛躍を実現したいという要望がありました。
- ローカルサービスへの高い要求:ブラジル企業であるT社は、納品スピード、言語面のコミュニケーション、アフターサービス対応に明確な要件を設けていました。
こうした課題に対し、ATOMIXはすでにソリューション設計を完了して現場導入の段階に入っており、各工程は計画どおりに着実に進んでいます。現在は設備の連携調整を仕上げる最終段階にあります。
3. ソリューション
ATOMIXはT社のために、パレットシャトルを核とする高密度スマート倉庫システムを設計し、約4,000m²、建築高さ26mの倉庫に導入しています。主な構成は次のとおりです。
| 項目 | パラメータ |
|---|---|
| 倉庫面積 | 約4,000m² |
| 保管高さ | 26m |
| パレット収容数 | 約30,000台 |
| 1パレットあたり最大積載重量 | 600kg |
| システム処理能力(設計値) | >200パレット/時間 |
| パレットシャトル | 25台 PS1500A(導入中) |
| リフト | 9台 |
| 管理ソフトウェア | Matrix8 ソフトウェアプラットフォーム |
本システムは柔軟な分散型設備の構成を採用しています。パレットシャトルは水平面内で前進・後退・左移動・右移動が可能で、リフトと組み合わせてフロアをまたぐ作業を行うことで、任意のパレット位置への正確な入出庫を実現します。

4. プロジェクトの価値(順次実現中)
設備の据え付けとシステム調整が進むにつれ、プロジェクトの各価値が少しずつ形になりつつあります。
1. 多様な規格への適合による総コストの大幅削減
パレットシャトルシステムは本質的に柔軟なスケジューリング能力を備え、サイズや積載重量の異なるパレットに対応できます。現在、現場では複数規格のパレットの適合テストを完了しており、T社は特定の規格のために専用設備を製作したり生産ラインを改修したりする必要がありません。設備の調達・統合コストを大幅に抑え、「1つのシステムで多様な規格に対応する」経済性を実現しています。
2. 新旧方式の互換による既存投資の保全
ATOMIXは高いソリューション設計力を生かし、お客様が従来の仕組みの中核部分を撤去することなく、新旧システムのシームレスな接続を実現しました。現段階のインターフェース連携は順調に進んでおり、これは改修に伴う生産停止リスクを下げるだけでなく、ソリューション全体の汎用性と互換性を高め、お客様がより低いハードルでスマート化を成し遂げられるよう支援します。
3. ロケーション利用率300%超の向上(目標達成済み)
従来の平屋倉庫と比較して、この高密度パレットシャトルシステムは26mの垂直空間を余すところなく活用し、密集した保管レイアウトによって、同じ床面積でパレット収容数を300%以上増やします。現在、ラックの据え付けはまもなく完了し、29,830台のパレット収容が全面稼働を迎えようとしています。土地コストが高騰する産業環境において、この価値は特に際立っています。
4. 多様な設備エコシステムの連携による工場内物流の一体化
本システムはエコシステムへの開放性が高く、T社が従来から使用しているAMRなど他社製の設備を効率的に接続し、連携させることができます。現在、AMRとパレットシャトルシステムのインターフェース調整が進んでいます。パレットシャトルが密集庫内のパレット入出庫を担い、AMRがラインサイドと庫外の短距離搬送を担うことで、「高密度保管+柔軟な搬送」の一体型物流ループを形成し、作業全体の効率を大幅に高めます。
5. 技術のローカライズ納品によるゼロ距離サービス
ATOMIXはブラジルの現地チームを通じて、自社開発技術の導入を全工程で進めています。現場への導入からシステム調整、その後の運用保守に至るまで、遠隔指導+現場監督+ローカライズ実施という体制を採っています。これにより、国をまたぐコミュニケーションの時間的・言語的な障壁をなくすとともに、迅速な対応と長期的な安定稼働を支えるアフターサービスを確保しています。
5. 期待される成果(まもなく稼働開始)
本システムが全面稼働すると、T社の半製品保管工程では次のような改善が実現します。
- 保管能力の飛躍:新たな用地を増やすことなく、パレット収容数を従来の平屋倉庫の10,000台未満から29,830台へ引き上げます。
- 作業効率の向上:入出庫処理能力が安定して203パレット/時間に達し、生産ラインのタクトを力強く支えます。
- 運用コストの削減:人手によるフォークリフト作業と庫内での品探しの時間を減らし、人件費と設備の消耗を抑えます。
- 生産の連続性向上:システムは7×24時間で安定稼働し、半製品の供給と生産ラインの需要を精緻にマッチングさせます。
- 将来の拡張性:システムアーキテクチャはスムーズな増設に対応し、事業の成長に合わせてシャトルとリフトの台数を段階的に増やせます。
6. まとめと展望
T社のブラジルスマート倉庫プロジェクトは、半製品の高密度保管という領域におけるパレットシャトル技術の成功例です。プロジェクトはまだ完全な引き渡しには至っていませんが、現場の進捗はソリューションの実現可能性を十分に裏付けています。柔軟な設備構成、新旧システムの互換戦略、多様な設備エコシステムの連携、そしてローカライズ納品により、ATOMIXはお客様の目下の倉庫ボトルネックを解消しただけでなく、長期的な拡張力を備えたスマート物流の基盤を築きました。
このプロジェクトは、土地が限られ、高い処理能力が求められ、設備エコシステムが複雑な製造現場において、パレットシャトルシステムが倉庫アップグレードの効率的で信頼性が高く、経済的な選択肢であることを証明しています。
プロジェクトは現在、最終段階に入り、本格稼働が間近に迫っています。今後、T社の事業拡大に伴い、このスマート倉庫もさらに増設され、製造実行システム(MES)とのより深い連携も模索しながら、「半製品のスマート保管」から「全工程のスマートマニュファクチャリング」へと歩みを進めていきます。
